宮崎駿監督『風立ちぬ』の、とても個人的なレビューを書く。

引退会見が、今月の6日にあるということで、その前に観ようと映画館へ行ってきました。語りたいことはたくさんありますが、できるだけ絞って書きました。復活の声も上がっていますが、個人的は、本当にお疲れさまでしたという気持ちです。過去のメイキングを見るとわかりますが、体を酷使して作品を作っているのは、一目瞭然です。その酷使して制作された、最後の作品「風立ちぬ」は、どういうことを観客に語らせたのでしょうか?

引退会見前に「風立ちぬ」を観てきました。

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この映画に関して、感想を述べたいという方は、かなり多数の方々がいらっしゃるではないかと思います。

観た映画について語りたいと思わせる作品は、僕は傑作の証拠であると考えます。

色んなことが挑戦づくしだった今作。観る前から、すごい体験ができるのではないか?という匂いはプンプンしていました。

 

観た後は、率直に心を整理することが困難だった。

いつものジブリ作品であれば、もうスッキリと「おもしろかったー!」なんて言いながら、お酒を片手に妻に語っていたものですが、今回ばかりは一緒に観た家族にも、劇場から出て何と声をかければよいか、正直分かりませんでした。

気持ち悪かったという意味ではなく、自分の中でどう消化してよいのか、分からなかったからです。

 

70歳を過ぎてもなお、挑戦し続ける姿勢

今までもそうであったように、今回もそういう挑戦する姿勢は、貫かれ過去の腕を存分に披露されながらそれでもなお、新境地に進んでいる個所は、幾多とありました。

・生き生きとしたキャラクター

・こだわりぬかれた「音」

・細かい部分までの動き(例 髪の毛や洋服)

特に大人の男女の描写は初めてじゃないかと思います。キスシーンを観ながら恥ずかしさを感じてしまいました。だって、こういうシーンはやりたくない監督なのかと(勝手に)思っていたからです。

他にも上げるとたくさんあり、キリがないので、今回はストーリー構成に限り書いてみます。

 

少々乱暴に進むストーリー展開

どこに新しさを一番感じたかというと、ストーリ展開でした。

過去の作品は、起承転結がはっきりしていて、特に混乱することもなく、エンディングまでしっかりと進んでいくストーリー展開でした。

例えれば「千と千尋の神隠し」。ジェットコースターのような展開で、一度レールに乗るとエンディングまで勝手に連れて行ってくれる、そういう流れでした。こういう勢いがある展開が、好きだと言う方も多いかと思います。

今回も、そういうつもりで観ていたので、最初の夢のシーンと、現実のシーンの行き帰から、少々混乱しました。

受身で観れる映画ならば、座って観とけばよいのですが「風立ちぬ」は、そうさせてくれません。観逃せば、分からなくなるからです。

そして、今回は3部構成の話で(これも珍しい)、構成と構成の間に少なくとも2度、時間の「空き」ができます。その「空き」を表現するために、映画ではよく「2年後」なんてテロップが画面に出てくるわけです。

しかし「風立ちぬ」はそういう説明はしません。急に、とはいいませんが、時間が進んだことを、しばらくこちらから考えなければいけない。これは過去の作品にはなかったと思います。常に考えながら観なければいけないため、観た後は、どっと疲れました。

 

時間に翻弄されながら、「生きねば」ならぬ二郎

振り返るとわかるのですが、この物語は、時間に追われていく物語でもあります。

大震災→世界大恐慌→戦争(同時に里見菜穂子の死までの時間)

と、段々と時間がなくなり、切迫していくことがわかります。時代に翻弄されながらも、限られた時間で、二郎と菜穂子は、「生きねば」ならないわけです。

精一杯生きているのに、なぜかズタズタになっていく二郎の人生。この矛盾が、重くのしかかってきます。それでも「生きねば」ならない。

東日本大震災、福島第1原発、リーマンショック、少子高齢化

希望が見出しにくい現代において、この映画から強く背中を押された気がしました。それも、やさしい押し方ではなく、厳しい押し方で。

 

最後の作品となった「風立ちぬ」

引退会見は、インターネットで生中継で観ていました。予想に反して、笑いもあり、和やかムードで、終わりをゆったりと迎えたような引退会見でした。

そこで印象深い話がありました。

「ぼくは文化人になりたくない、町工場のオヤジなんです。それを貫きたい。発信したいとかは思いません。」

小津監督も宮崎監督も、こういう謙虚さがいいなと思います。僕らの世代は、インターネットがあるので、発信しないわけにはいけないのですが、これは、見習いたい。

宮崎監督のフィルモグラフィーの最後に、「風立ちぬ」。本当にすごい、と思いました。また「風立ちぬ」を観ると思います。だっていい映画には、すべてが詰まっているからです。

 

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